遊泳する言葉

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レモンとデーモン

レモンとデーモン(悪魔)は似ていて、どちらもお日さまをかくしている、という詩を書いた人がいます。レモンは色からして、いかにもお日さまをとじ込めているように見えます。けれども、デーモンの中にもお日さまがあるという発想は、とても面白いと思いました。レモンの中にも、デーモンの中にもお日さまが隠れているとすれば、もしかしたら、レモンの中にデーモンが隠れているということもあるかもしれません。『檸檬』という短...

名僧のみた風景

昔、和泉の国(現大阪府の南部)に行基という偉いお坊さんがいたそうです。村人が川が渡れなくて不便だというと橋をつくり、百姓が雨が降らなくて困っているというと溜め池をつくったそうです。いま住んでいる近くにも大きな溜め池があります。この池も行基か、あるいは行基の意志や知恵を受け継いだ人たちが造ったものだろうか、と考えながら眺めていると、先人たちが生活を賭けた命の川にみえてくるのです。毎年、この時期になる...

石舞台

奈良の飛鳥を歩くと、いろいろな石たちが謎かけをしてきます。石舞台、酒船石、亀石、猿石、鬼の俎板、鬼の雪隠など、その命名にも謎が含まれていますが、今もなお訪ねる人に、スフィンクスのように千年をこえた深い謎をかけてくるのです。石舞台古墳を初めて案内してくれたのは友人のH君でした。その頃は田んぼの中に、とてつもなく大きな石がただ積まれてあるだけでした。なんであんなものが、あんなところにあるのだという驚き...

赤い鳥

いつも散歩をする近くの自然公園に、気になる赤い実があります。大豆くらいの大きさで、枝には小さな棘があり、名前はわかりません。よく熟した色ですが、食べられそうにはありません。子どもの頃、山に入って採って食べた赤い実はほのかな酸味がありました。あれも何という木の実だったのか知りません。食べられるものはなんでも食べました。その習性で、赤い実を見ると食べられそうな気がするのです。今でもしっかりと残っている...

琵琶謝謝

近くの公園の野外ステージで、エンキ(閻杰)さんの中国琵琶の演奏を聞きました。エンキさんは中国大連市生まれで、現在は日本で演奏活動をされています。といっても、エンキさんのことも中国琵琶の演奏もはじめて聞いたのでした。日本でも琵琶の歴史は古く、奈良の正倉院には1300年前に大陸から渡ってきたとされる、煌びやかな螺鈿細工が施された美しい琵琶があります。ぼくが子どもの頃に育った九州の田舎では、琵琶を背中に...

吾亦紅

学生の頃、東京ではじめて下宿した家の、ぼくの部屋には鍵がありませんでした。ですから、ときどき2歳になるゲンちゃんという男の子が、いきなりドアを開けて飛び込んでくるのです。そのたびに、気配を察した奥さんが慌ててゲンちゃんを連れ戻しにくるのですが、そのときに、いつも何気ないひと言を残していきました。「玄関のお花、ワレモコウっていうのよ」ぼくの部屋は玄関のすぐ隣りにあったので、ドアを開けると下駄箱の上の...

眠れない子どもたち

夜回り先生こと水谷修先生のドキュメンタリー番組(NHK)をみました。いまの世の中はあまりにも攻撃的な世の中だという。子どもたちの父親は、会社では営業成績を上げろとうるさく上司に責められるので、家に帰ると反動で妻や子どもに当たる。母親は勉強しろ成績を上げろと子どもの尻をたたく。立場の強い者が弱い者を一方的に攻撃する。最終的に追いつめられるのは子どもたちです。強い子どもたちは仲間をいじめたり、夜の世界へ...

アール・ブリュット

アール・ブリュット(Art Brut)とは、フランス語で「なまのままの芸術」という意味だそうです。精神病患者や幻視者などにより制作された絵画やオブジェを指すようです。精神障害や知的障害のある人が描いた絵の中には、ときどき観る人の心を大きく揺さぶるような力をもったものがあるのですが、それは何故でしょうか。エドモン・モンシェルという人は、自分の店をナチスに奪われて精神を病み、20年間、屋根裏に引きこもって暮ら...

疲れた日記

日記を書くということは、ぼくはあまり好きではありません。毎日記録するほどの、変化のある生活を送っていないということもありますが、変哲のない生活をしながら日記をつけようとすると、どうしても内省的な日記になってしまうのです。自分の外に変化がないと、自分の内に変化をさがそうとします。けれども、外も内もそんなに目新しいことがあるわけではありません。日記は、いや日々の生活はやはり、手で書くものではなくて足で...

飾る言葉も 洒落もない

ある歌の一節が頭から離れない。   絵もない 花もない 歌もない   飾る言葉も 洒落もないそんな居酒屋で、たまたま横にすわった男と女。女の冷たいセリフがいい。いまでは、そんな居酒屋はもうない、どこにもない、でしょうね。場違いな油絵が壁にかかっていたりする。花は年中溢れていて、蕾のまま咲かない花もある。カラオケのモニターとマイク、歌はつぎつぎと流れて尽きない。テレビも雑誌も飾り立てた言葉だらけ、駄...

植物になりたい

毒物に異常な興味をもった女子高生は、自分のブログの日記に「植物になりたい」と書いていたらしいですね。「植物には大きな喜びもないけれど、大きな悲しみもない」というようなことが書いてあったという。その女子高生はいま、母親を毒殺しようとした嫌疑で拘束されています。化学の好きな優秀な生徒だったらしいが、どういう動機で興味の方向が逸れてしまったのでしょうか。まだ真相が明らかでないので何ともいえませんが、最近...

たわいない話

たわいない話を書いてみたい。たわいないか、たあいないか、どちらが正しいのか、どちらも正しいのか、よくわかりません。最近あまり使われない言葉のようで、使うのにも自信がもてないのです。とにかく、そんな言葉が出てきたので、たわいない話とはどんな話だろう、と思ったのでした。他愛ないなどという当て字もあったような気がします。愛などという大げさな字が当てられると、なんだか、たわいなくもないようにみえてきます。...