遊泳する言葉

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冬眠から覚めて

けさ、池の端の道を歩いているとき、冬眠から覚めたばかりの、カメの親子の会話を聞いてしまいました。さむいよ、おかあさん、さむいよ。ほんに寒いね。きょうで3月も終わりだというに、こないだ桜の花びらが舞っていると思うたんは、あれは雪やったんかいね。さくらなんか、どこにもないよ、おかあさん。まったく人騒がせな(うんにゃ亀騒がせだったような…)お天気だんべ。こんなに早起きして損したばってんね。(カメの方言は...

卒業  <詩>

せんせいこないだ雪が降ったろインコのチッチが死んだんだぼくの手の上で翼をいっぱいにひろげてそれっきり動かない卒業式で「翼をください」を歌ったろせんせいも悲しいときはただ泣くだけかいぼくたち翼がないから鳥みたいに死ねないろ鳥みたいに飛べないろせんせいとピアニカチッチのつぎに好きだったけどぼくがもっと大きくなるまでさよなら...

美しい言葉

先月、詩人の茨木のり子が79歳で亡くなりました。『わたしが一番きれいだったとき』という詩を読んだことがあるひとは多いと思います。実際もきれいなひとだったらしくて、『櫂』という詩誌の同人だった川崎洋が、初対面のときの印象をきれいなひとだったと、どこかで書いていました。「奥さんの詩は俺にもわかるよ」は、彼女の『二人の左官屋』という詩の中の1行ですが、たしかに彼女の詩はやさしく読める詩が多いので、幅広い...

ディープブルー <詩>

どおおんと山を越えてくるそれは鯨 たぶんそのとき大きな波の下で ひとはディープブルーに染まる背中から背中へ流れるかなしみの深さを ひとは知ることができないだれも暗がりの方は見ないから風よりも遠いものに ひとの手は届かなくて小さな波を ひたすらに送りつづけるそれは 吐息のようなものでとぎれとぎれに生きることを継いでいる手の先にひとの 温もりがあるといいふたたび鯨が たぶんどおおんと山を越えるとき空は...

お水取り

寒い冬が長く続いたあとに、古都の暗がりの一隅で、突然勢いよく燃え上がった大松明の炎が中空の闇を走り抜ける。冬から春への華麗な儀式が、奈良東大寺の二月堂で、3月始めの14日間つづけられます。752年の大仏開眼から一度も欠かさずに行われてきたという修二会(しゅにえ)の行です。ちょうど阪神大震災のあった年のことでした。二月堂の舞台から、暮れてゆく奈良盆地の夕景を眺めているうちに、そのままその場所にとり残...

雛の手紙

六日の菖蒲・十日の菊、ではないけれど、わが家では今頃になってお雛様を出しています。いつまでも飾っておくと娘の婚期が遅れるなどと言いながら、おおかたの家では慌ててお雛様を片付けている頃ですね。今年は寒すぎる冬で、いつまでも春の気配が感じられなかったとか、やれ正月だ、やれ節分だと、季節の推移が早すぎて追いつけないとか、なんだかんだと理由づけしてしまいますが、つまるところ、時間や季節の感覚に鈍感になった...