遊泳する言葉

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道頓堀2006夏

南海高野線に乗って難波に出る。高島屋の前の信号をわたり、人の流れにのって戎橋筋をまっすぐに歩く。千日前の広い車道を渡ってすこし行くと右へ曲がって、いつものように足は法善寺横丁の方へ向いています。といっても、もう何年ぶり、というほどの久しぶりなのです。少しずつ街はきれいになり、若者たちの服装もおしゃれになって、知らない街を歩いているような、すっかりお上りさんになってしまったようで、緊張感のあるこの感...

袖振り合うも多生の縁

宅配便で小さな荷物が届いた。中には絵手紙と竹の皮でくるんだ和菓子が入っていました。ある人に写真1枚とCDを送った、そのお礼らしい。先日、弥生博物館で館内の展示物の写真を撮っていた折に、知らない中年の女性が近づいてきて、どうしても写真にとって欲しいものがあると言います。高いところにある荷物を、ちょいと降ろしてほしいといったような調子です。すっかり弥生人たちの世界に没頭していたぼくは、突然、ずうずうしい...

雨が降っている <詩>

この雨はもう止まないかもしれない街も道路も車も人も水浸しになっているほんとに誰かがバケツの水をぶちまけているのだろうか梅雨の終わりには雨の神さまがバケツを空っぽにして騒ぐのさそう言ってた祖母はいまや雨より高いところにいてぶちまけたバケツの水で溺れそうになった父もとっくに雨の向こうへ行ってしまった裏には山があり前には川がある今頃は年老いた母がひとりぼっちで泣いている たぶん家財道具を2度も川にさらわ...

星座 II  <詩>

あなたのひとさし指を見つめていました星と星がつながってゆくときめきをあれがアンタレスあれがサソリ座ゼウスのたくらみのハクチョウ座美しいアルタイルのワシ座星から星へ導かれながら翼になってゆく私あなたの指先が触れる翼のかたち私の知らなかった私のかたち輝きながら ゆっくりと全天がまわる 宇宙は縁どられた輝きのかたまり そしてあなたは輝きのなかに消える ひとつの輝きのように ああ、まばゆいギリシャの神さま 星に...

星座  <詩>

星と星をつないでゆくあなたの指の先で翼をひろげた白鳥が生まれる古いギリシャの名前が覚えられない翼は夜のかたちそれなのに星と星との距離を越えることはできないあなたの指先が触れる唇のかたち乳房のかたちわたしの知らないわたしのかたち輝きながらゆっくりと全天がまわる宇宙は縁どられた輝きのかたまりあなたは輝きのなかに消えるひとつの輝きのようにああ、遠いギリシャの神さまそのとき落ちていった星の名前を教えてくだ...

いのちの言葉

11歳の車椅子の少女。12色の色鉛筆で、それぞれの色の12本の線をノートに引いた。彼女は左手しか使えない。12色の線の横に、彼女は言葉を並べる。初めての詩だった。    12色、    ここには、12色のいろがある    目立たない色もあるけれど    みんな、    がんばってる    ひとつ、ひとつクラスメイトが校庭で体育の授業をしているのを、教室にひとり残って窓越しに見学していた車椅子の彼女...

転生  <詩>

だれか森の奥で山桃の実を食べている指のさきから尻尾のさきまで赤く染まり鳥のように生きている魚のように生きているひと粒はひと粒のためにいっぴきはいっぴきのために熱い唇から唇へ乳房から乳房へときには地上から地上へうち震える葉脈の川に嵐はあるかしら飢えはあるかしらやわらかい果実の子宮に地球の種は宿っているかしらもういちど生まれかわる夜はだれかとだれか赤い目をした生きものになる周回する森の星座になるそして...

だれが、なぜ、描いたのだろう

ひとは、いつ頃から絵というものを描き始めたのでしょうか。確認されている一番古い絵は、約2万年前のアルタミラやラスコーの洞窟の壁に残されている動物画だそうですが、わが国では、およそ2千年前の弥生時代の土器や銅鐸に線描きされたものが最古でしょうか。先日、近くの弥生文化博物館に行ってきたのですが、弥生時代に描かれたとされる絵は、見ているとどれも妙に懐かしいものがあります。どこかで見たことがあるような懐か...

神話  <詩>

浮き輪をもって海へいく約束だったのにこの夏もお父さんは白い雲になったままです空は海よりも広くて青いと言いながら地べたと空のあいだで両腕をまっすぐに伸ばして合図しています海賊だったお父さんのお祖母ちゃんのお祖父ちゃんは備前の山奥で死んだそうですお父さんのお祖母ちゃんのお祖父ちゃんのしゃれこうべを古い墓地で見たことがお父さんの自慢です夏はぽんぽん草の服を着た人たちがたくさん死んだ話ばかり山奥のさらに山...