遊泳する言葉

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夢の浮橋

久しぶりに宇治へ行った。今までいくどか行ったことがあるが、信楽から茶処の朝宮を抜けて山を下ったり、奈良から木津川を渡って宇治の街に入ったりしたのは、いずれも車でだった。今回、初めて電車で訪ねてみると、まるで知らない街に降りたったように、宇治の街が新鮮にみえた。車だと見えていなかったところが随分あったのです。京阪電車の中書島という駅で宇治線に乗り換える。車両も2両きりになって、次の駅舎が見えるくらい...

杉の葉拾いをした頃

田舎で育ったから、田舎の記憶がいっぱいある。風が強く吹いた翌朝、杉林のそばの道を歩いていると、杉の葉が重なるように落ちている。いまでも、杉の葉をただ踏んで歩くのはもったいないような気持になる。大きな炭俵にぎゅうぎゅう詰め込んで家に持って帰れば、それだけで親孝行になったものでした。現代のようなガスのある生活ではなかった。かまどで薪を燃やして煮炊きをしていた頃、杉の枯葉は火付きがよくて、焚き付けとして...

天平の青い空

立秋の7日、日本列島を猛烈な風が吹き荒れました。北海道佐呂間町では竜巻が発生。倒壊した建物の下敷きになって9人の命が奪われました。国内での竜巻被害としては最悪だとみられています。「直前まで晴天だったが、突然激しい雨と強い風に見舞われ、雷が鳴ると同時に空が真っ暗になった」という目撃者の情報が新聞に載っていました。まさに青天の霹靂。恐ろしいことです。同じ日に、近畿地方では木枯らし1号が吹いたと気象台の...

ナオキの相対性理論

ナオキというのは、小学4年生の孫のことです。学校でのあれこれを母親に話しているのを、そばで聞くともなく聞いていると面白い。先日、相対性理論のことを口にしたら、クラスの誰も知らなかったと言う。え? 相対性理論? ぼくは耳を疑った。そんなことを知っている小学生がいたら、このじじが教えてもらいたい。だが、天才でも秀才でもないお前が、なんでそんな言葉を知っているのか驚いた。相対性理論をこちらにふられてはか...

求道者みたい

そんなところで、そんな格好をしてはると、キュウドウシャみたいやね―ある朝、そんなことを、長靴おばちゃんに言われた。ぼくはいつものように、公園のベンチで丹田呼吸をしながら、体の中に溜まった雑念を吐き出していた最中で、靄のような汚れたものに、どっぷりと包まれていたのです。キュウドウシャ? 求道者? 咄嗟にふたつの言葉が、靄の中でせわしく明滅しました。ふたつの言葉が繋がらない。いや、繋げたくない戸惑いが...