遊泳する言葉

Archive Page

時間の糸

ウォーキングコースの途中に、太陽電池で動いている時計がある。そこでいつも時間を確かめる。とくに確かめる必要もないのだが、時間を確認するという安心感がある。コースは大体決まっているので、時間を気にすることもないのだが、その場所で時計を見ることが習慣になっていて、いつも何気なく見ている。そして、なんとなく納得して通り過ぎる。時間を確認したつもりが、ときどき、時間の記憶が残っていないことがある。時計を見...

水鳥の生態

近くの池で、水鳥がひときわ変わった泳ぎをしていることがある。2羽で追いかけっこをしている。それも、どちらが追いかけて、どちらが追いかけられているのか判らない。ぐるぐるとコマが回っているような円を描いている。その動きは激しくて、池のその部分だけが沸騰しているようにみえる。水鳥が恋をしているのだと思った。雄と雌の2羽は相思相愛の仲。その円い動きが証明している。片思いであれば、どちらかが追いかけ、どちら...

霜柱はなぜ立つのか

冷え込んだ今朝は、公園の草むら一面に霜が降りていた。草の葉っぱのひとつひとつが、白く化粧をしたように美しくみえた。地面がむき出しになった部分では、よく見ると小さな霜柱も立っている。なんだか久しぶりに見たので、それが霜柱だとは信じられなかった。子どもの頃は、よく霜柱を踏みながら登校した。夜中の間に、地面を持ち上げて出来る氷の柱が不思議だった。地中にいる虫のようなものが悪戯をしているのではないか、と思...

「考えているのは僕の中の彼」

月間300枚もの原稿を書き上げるという、直木賞作家の石田衣良がテレビに出ていた。昨年の暮れに放映された番組の再放送で、NHKドキュメント『考える』。「自殺願望を持つ少女が自殺をやめたくなるような童話を作れ」というミッションが与えられ、作家が童話を完成させるというもの。これには二つの制約が課せられている。ひとつは48時間以内にという時間制限。もうひとつは、辞書から作家が無作為に選んだ三つの言葉、「ガチ...

ねずみの歯が欲しい

お鏡餅を切った。この冬は暖房機がなかったせいか、あまり黴びなかった。そのかわり表面にひびが入ってカチカチになった。切るのにひと苦労だった。きょ年はスーパーで買ったお鏡だったので、いざ切ろうとしたら中は小餅でがっかりした。それで今回は、餅屋でちゃんとお鏡の形をした餅を買ったのだった。鏡餅は、その特有の歯ごたえがうまさでもあるのだろう。醤油を付けてこんがりと焼く。焼くのも時間がかかるが、食べるのも、し...

鳥啼き魚の目は泪

毎日ぼくは、琵琶湖の水を飲んでいる。といっても、湖水を掬って飲んでいるわけではない。琵琶湖の水は、瀬田川から宇治川へ、そして淀川となって大阪湾に流れ込んでいる。その途中で取水され浄化されたものが、水道管を通ってわが家まで来る。それをぼくは蛇口から頂戴する。ただの水道水を飲んでいるのだ。けれども時には、「ああ、琵琶湖の水を飲んでるんだなあ」と思うことがある。遠くにある、とてつもなくでっかい水がめを想...

えべっさん、たのんまっせ!

きょう10日は十日戎(えびす)。大阪では今宮戎や堀川戎などをはじめ、あちこちの神社で「商売繁盛で笹もってこい!」の掛け声で賑わう。今日まで正月なのだ。祭神の戎さんは、おなじみ左脇に鯛、右手に釣竿をもっていて、釣り好きな人間には親しみのもてる神様だ。鯛ばかり食べている神様かと思っていたが、この日に供えられる神饌(熟饌と呼ばれるものらしい)の中味をみると、赤飯、御酒、鰤の味噌蒸し、鰆の塩物、あわびの塩...

火の文字

最近は、焚き火をめっきり見かけなくなった。大きな焚き火が燃えているのは、正月の神社ぐらいだろうか。早朝の境内の一角で、古木の太い丸太が勢いよく燃えているのは、そこに神の寄り代があるような、ありがたくなるような懐かしい光景だ。立ち昇る火の勢い、木の爆ぜる音、煙の匂い、もろに押し寄せてくるものがある。体が熱くなる。神社で拍手を打つとき、ひとは自分に欠けているものを満たしたいと思うようだ。体が弱いひとは...

れんこんの正月

今年の正月はひとり暮らしをしている。相方は病気の母親と過ごすため、元日の新幹線で関東へ向かった。作り置きの正月の煮しめを朝夕食べる。だんだん腹が疲れてきて、同じものを食べるのもしんどくなってきた。ごまめとお茶漬けくらいがちょうどいい。それと軽い煮しめ。こんにゃくとごぼう、竹の子とれんこん。れんこんは穴がたくさんあいていて見通しがいい、ということから縁起のよい食材とされている。正月早々、毎日れんこん...

気が生まれるという木

あけましておめでとうございます。本年もよろしく!写真は、京都貴船神社の御神木である桂の木。樹齢は400年、高さは30mもあるらしい。根元から空へまっすぐに伸びる枝の勢いがすごい。葉が落ちつくして枝ばかりになった冬のたたずまいは、木というものを超えた凄まじさがある。御神木が落葉樹というのも珍しいかもしれない。貴船は、古くは「気生根(きふね)」とも表記されたそうで、気の生ずる根源、すなわち大地のエネル...