遊泳する言葉

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変身する

いつも言葉のことを考えている。言葉で考える。言葉で自分を表現する。言葉でひととコミュニケートする。言葉を並べる。詩ができる。そう簡単ではない。言葉は楽しませてくれるが、悩ませてもくれる。言葉を選ぶ。衣装のように着たり脱いだりする。なかなか自分の体にフィットしない。感情のさざ波は常に立っている。けれども大荒れすることはない。ぼくは自分のことを、気分が比較的安定した人間だと思っている。だが、とつぜん自...

ふるさとの山はありがたきかな

毎朝、眺める山がある。その山のことを、詩に書いたことがある。   わしには何もないきに   あん山ば   おまえにやっとよ    (「つくつくぼうし」)そう言って、祖父がぼくにくれた山だ。詩の言葉が降ってくるように、その時は、祖父の肉声が聞こえた。そして、その山はしっかりとぼくに受け渡された。もちろん、それは冗談だが、その詩が浮かんだときから、その山はぼくのものになったのだった。山は遠くにある。な...

恋も時計も多い方がいい

あるサイトの扉で、「恋も時計も多い方がいい」というキャッチコピーを目にして、思わずクリックしてしまった。置時計、壁時計など、家の中に時計はたくさんある。だが、恋と時計となれば腕時計だろう。街角で、喫茶店で、腕時計を気にしながらどきどきする。古い映画のようなシーンを想像してしまった。ぼくは腕時計を2個持っているが、最近はほとんど腕にはめたことがない。ぼくの時計が時を刻むのをやめているように、ぼくのど...

蜜の季節

梅が咲いた。メジロが花の蜜を吸っている。小さな体が縦になったり横になったり、逆立ちしたりして、花から花へととりついている。花の間に見え隠れする緑色の羽が、点滅する至福の色にみえる。ぼく等もかつては、花の蜜を吸った。ツツジやツバキの蜜を、むしり取った花の、とがった尻の部分から吸った。美味しかったかどうかは憶えていない。ゲームのようなものだった。習性のようなものだった。わずかでも甘みのあるものは、口に...

目覚めよと呼ぶ声が聞こえる

黄色い魁の小さな明かりがともる。一日がすこし明るくなるひんやりと花の奥にひそむはるかな香りに浮き立つ夢の中から夢が。花の木の下では凍えながら眠りつづけるぼくの蒼白な虫たちぽつぽつと灯をともし咲いては落ちる無明の音を聞いている。   (写真は、ことしも咲いた蝋梅の花)...

ノート

ネット詩人のモーヌ。さんが亡くなって、もうすぐ3か月になる。直後の悲しみの中で、奥方のたちばなまことさんが、自分のブログにモーヌ。さんの散文ノートの抜粋を載せていたのを、読んだ。   今朝お線香をあげたときに、お願いをした。   「ブログに書かせてね。私の救いになることは、こんなことばかりなんだ。」と書き始められている。物を書くひとは、書いたり読んだりすることで、なによりも強い、心の繋がりがもてる...