遊泳する言葉

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シロツメグサ <詩>

シロツメグサで首飾りと花束をつくりぼくたちは結婚したわたしの秘密をあなたにだけ教えてあげると花嫁は言った唇よりも軟らかい小さく閉じられた秘密があったシロツメグサで髪をかざり赤ちゃんになったりお母さんになったりお父さんになったり赤ちゃんになったりした朝といえば朝になり夜といえば夜になった夏といえば夏になり冬といえば冬になった一日は早く一年も早かったおいしいおいしいと言いながらシロツメグサのパンばかり...

空が飛んだ

空を飛んだでも、空へ飛んだでもない。空が飛んだ、なのだ。ふと窓へ目をやったら、鳳凰が羽を広げたような白い雲が、窓いっぱいに広がっていた。おもわず空が飛んでいると思った。大きな白い羽を広げて、飛んでいるのは雲ではなく空だった。それは、一瞬の錯覚だったけど、錯覚であることを確かめる前に、カメラを持って外へ出ていた。とにかく何かが飛んでいるという、その不思議さに突き動かされたのだった。すでに空には、何者...

さわらび(早蕨)の道

宇治は茶の香り。爽やかな五月の風が吹いてくると、いつのまにか、香りのする風の方へ足が向いてしまう。だが高価な新茶は、いつも香りだけ。「おつめは?」と問う客人に、「宇治の上林でございます」と亭主がこたえる。そんな雅な茶会の雰囲気からも、ほど遠い道を歩いている。千利休の数寄道、小堀遠州の茶の道。究極の精神性を求めて、茶道などという美の形を生み出した、先人達のことなども風のように吹きながす。まずは駅前の...

ニセアカシアが咲いている

今年もニセアカシアの白い花が、高い木のうえで空を蔽うように咲いている。見上げると、甘い香りがふんだんに降ってくる。だいぶ太陽に近づいた花だ。もう春ではない、夏だ。そんな感じであたりを席巻している。ニセアカシアというからには、本物のアカシアもあるのだろう。だが、ぼくは本物を知らないから、本物もニセ物もない。花は花だ。花として美しく派手やかに咲いている。ニセなどと呼ばれることは不本意だろう。ぼくはとき...