遊泳する言葉

Archive Page

ちいさな旅立ち

見過ごしてしまうところだった。眼を凝らさないとわからないほどの、小さいが凄まじい蠢きがおきていた。ベランダの蛾の卵が孵ったのだ。幼虫があまりに小さいので、虫メガネを通して写真を撮ってみた(下の写真)。鉛筆で点を打ったような小さなものが無数に、見えない糸を引いてぶら下がり、風に吹かれて揺れている。よく見ると、点はくの字になったり、しの字になったりしてくねっている。強い風が吹いてくると、点の一団はどこ...

動くことば

ひとつふたつと数えられるほどに、桜の花が咲きはじめている。ここ2~3日で、ユキヤナギもアカシアも満開になった。モクレンやコブシも競うように花ひらいている。春に向かう自然の勢いに圧倒されるこのところ、言葉を動かして遊んでいた。言葉に絵(写真)を添えて動かしてみる。ときどき、意図しないものが見えたりして楽しかった。勝手に動いていくものがあった。勝手に動いていくから、それは自分を超えたものであり、ふと発...

蛾のゆくえ

2月のある朝、ベランダの手すりの一部分が緑色に錆びていた。いや、錆びていると見えたのは錯覚だった。タラコの粒くらいの小さな卵が、サッシの手すりにべったりと生みつけられていたのだった。その数は何百何千とありそうだった。数えるのも億劫なくらいの量だ。すぐそばに、きたない灰色の蛾がいたので、卵の主がすぐにわかった。蛾はじっとしたまま一日じゅう微動だにしない。死んでいるのかと思ったが、夜中に見たら卵の上に...

夢の浮橋

日曜日の朝は、ラジオを6時にセットしてある。寝床のなかで、まだ夢うつつのまま、古典講読の『源氏物語』を聴く。加賀美 幸子アナウンサーの古文朗読が心地いい。日本語はそんなにきれいだったのかと思う。言葉の意味はまだらにしか解らない。まるで外国語を聞いているようだ。毎回、朧がかかった夢の続きに浸っているようだ。それが心地いいのかもしれない。解説は大阪大学名誉教授の伊井 春樹氏。懇切丁寧な解説を聞きながら、...