遊泳する言葉

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みんな どこへ行ってしまったのか

今週もなんとかささやかな詩を投稿したささやかに残っていたささやかな感情と ささやかな言葉をまぜて恥じらいもなく吐きだしたささやかはさみしい出してしまえば あとは何も残らないいつも同じ いつもくりかえす空っぽのさみしさだ感動がほしい歓びと哀しみがほしい苦しみと安らぎがほしい涙がほしいみんな どこへ行ってしまったのか泣いていた人たちよ苦しいと訴えていた人たちよたがいに慰めあっていた人たちよいちずに恋し...

彼岸

山の裾を ていねいに両手でならしていた おばあさんのあれからまた小さな山が ひとつふえた新しい山は ひとの形をしている足のしたで 山はお腹のように やわらかかった踏んだらあかんおばあさんにしかられたそこには おじいさんが寝とるんやさかい土の中で 骨だけになっていくやがて骨だけが掘りだされ うち捨てられ骨は 骨でなくなってまたひとつ 石の標しになるのだったまいにち足ぶみの臼で 玄米をつき大きな木のへ...

カビの宇宙

夜になると、虫の声が賑やかになった。空では月がひとつ、ひんやりと澄みきっている。生まれかわったように美しい。昼間せめぎあっていた二つの季節が、夜にはすっかり秋の領分になっている。久しぶりに、風を寒いと感じて窓を閉めた。夏のあいだ開放していた窓を締めきると、どこからともなくカビ臭い匂いがしてきた。いかにも部屋に閉じこめられている感じがする。この感覚は懐かしい。カビの匂いは嫌いではない。カビ臭い部屋に...

蜻蛉(とんぼ)

赤いチョークのようなトンボが風をひっかきひっかきぼくの背たけを測っているぼくは大きくなっただろうか朝ごとにぼくは生まれるよろこびとかなしみの草の中からふと目覚めたようにことばも生まれるあたらしい朝を伝えるためぼくの背たけをこえきみの背たけをめざして空へ飛びたつ秋は風も澄みわたるのでぼくのトンボは草の匂いを見失うかもしれないきょうトンボは蜻蛉ということばを知った翅が濡れているのでまだ飛べない...

階段

まいにち 階段の数をかぞえるそれが 母の日課だった増えたり減ったりするので とても疲れると母はぼやく階段のある家には 住みたくないと言った階段がなくなったら ぼくの駅がなくなってしまう階段の途中に ぼくの駅はあった痩せて背の高いひとが いつも手をふっているぼくの帰りを待っている 父の手だったまっすぐに横に伸ばし それから斜めに下ろすかたんと音がして 列車が通過する階段を上り 階段を下りるひとつひと...