遊泳する言葉

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葉書

忘れるほどの歳月の向こうから1枚の葉書が届いたまだ文字を知らなかった3歳の娘がいつか手紙のまねごとで落書きしたものだこの秋の古い引き出しからそれは落葉のようにはらりと落ちてきたのだった文字にならない文字いつか読み解くかもしれない誰かのために言葉は遅れてやってくるのだろうかつぶやきのまま文字にならなかった文字を言葉にならなかった言葉をいまだ私は文字にできないまま言葉にもできないままでその葉書をふたた...

亀の井戸

法要のため、久しぶりに四天王寺を訪れた。近くの学園の女生徒たちが下校していく商店街を、すこし脇に入ると石の鳥居がある。鳥居というものは、一般的には神社にあるものだけれど、四天王寺には石の鳥居がある。吉野の銅の鳥居、安芸の宮島の木の鳥居とともに、日本三大鳥居のひとつとされている。聖地結界を示すものとされる、その石の鳥居をくぐり、さらに西の大門(写真)から境内に入る。正面の五重塔が、澄んだ秋空をもちあ...

流星群

おれんじ色の船にのってぼく砂漠へ行くのきれいな流星群を見つけたらきみに長い長い手紙をかくそれからポストを探して3千年の旅をする(ここ数日、東の空で見られるオリオン座流星群は、約3000年前のハレー彗星の塵だそうですね)...

オーロラ

ゆうがた 河川敷でキャッチボールをするおじさんとの日課だったしばしば深い草むらにボールを見失うボールは地球の卵だからなすぐに地球のふところに帰りたがるのさおじさんの口ぐせだったいつかアラスカに行こうそれも おじさんの口ぐせだった地球のてっぺんでオーロラを見ようぜぼくがインフルエンザにかかって39度の熱にうなされているときほら地球の卵だ かわいがってやんなぼくの枕元にボールを放り投げておじさんはアラ...

朝顔

10月11日蔓も葉っぱも枯れてしまったさいごの花が咲いたとても小さいこれはメモです。日記です。メールです。写真です。それだけです。*今年いちばんの朝顔が咲いた日。「何もないところに何かが生まれる。それが花の不思議だ」と書いた。その花の不思議を、いまは写真で残すことしかできない。...

やまぶどう

きょう夕やけを見ていたら 空があかい舌をだした飛行機にのって船にのって汽車にのってここまで来たんだよ と彼女はいった空と海と陸地とそんなにいろんな乗り物にのってどれほど遠いところから来たんだろうあの山よりもずっと空よりもずっとずっと 遠いんだよ風に髪がゆれるといい匂いがするはじめて聞く めずらしい言葉でぼくが知らないことをいっぱいしゃべっただけど彼女はやまぶどうを知らなかったふかい藪にかくしてある...

ぼくは どこへも行けない

ぼくは 生きていますなんとなく 生きていますいいえ ほんとは生きたいと思って 生きていますぼくはときどき 詩を書いています詩のようなもの と言ったほうがいいかもしれませんなぜなら それを書くのは もうひとりのぼくだからですもうひとりのぼくは ぼくから逃げようとしますうまく逃げきることができたとき そいつは詩のようなものを 書いたりするのですぼくから逃げているのでそいつの言葉は ぼくの言葉ではないみ...