遊泳する言葉

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星の時間

こんや、国際宇宙ステーション(ISS)が上空を飛行していくのを見た。ちょうど金星くらいの明るさの光が、南西から北東に向かって夜空を流れていった。その光の軌跡を追うことができたのは5分間ほどだったが、真上を通過するときは、肉眼でもかなり明るく見えた。それは1個の小さな星にすぎなかったが、ひとの手で作られた星だと思うと、特別な感動が時空を超えていくような気がした。その星は音もなく静かに、宇宙の時間を刻ん...

昨日の風を聞いている

昨日の風は鳴ってゐた……は、立原道造の詩の言葉だけれど、ふと昨日の風の声を聞いてみたいと思った。もしも風に記憶というものがあるとしたら、それぞれの風が通ってきた、それぞれの記憶の道があるかもしれなかった。記憶の風景の中を吹きすぎていく風は、たぶん音楽のようなものだろう。   しづかな歌よ ゆるやかに   おまへは どこから 来て   どこへ 私を過ぎて   消えて 行く?            (立...

変幻自在する日本語

ウェブブラウザをInternet ExplorerからGoogle Chromeにかえた。準急から快速に乗り換えたような、スピード感とスムーズ感を味わっている。Chromeとは、窓枠や窓などを意味する英語のスラングらしい。部屋にまたひとつ窓が増えて、風通しも良くなったような気がする。ブラウザウィンドウもシンプルで余分なものがない。ツールバーも自分の使いやすい構成ができるので、操作もしやすく反応もいい。キーボードを打ち、マウスをクリッ...

とびだすな!

坂口安吾の『桜の森の満開の下』。ラジオの朗読で聴いたあとで、もういちど本で読み返してみた。朗読ではかなり原文が省略され、脚色もされていた。だが、耳から入ってくる桜のイメージは美しかった。小説では桜花の美しさよりも妖しさが、女(鬼)のそれとダブるように切々と書き込まれている。山賊は花の前でしきりに煩悶する。花の美しさは永遠ではない。いっときの幻に似た、とても困った美しさなのだ。花の下は、「冷めたい風...

桜の森の満開の下

朝の目覚まし用に、ラジオのタイマーを6時にセットしてある。毎朝やわらかく耳から入ってくる音声が、まだ夢のつづきを語っているように聞こえる。意識よりも感覚の海を漂っている感じだ。困ったな困ったなという、あいまいな思いの小舟が揺れている。今日あたりは桜が満開にちがいない、という意識がかすかに波立っている。桜が満開であること。なぜだか、そのことが困ったことのようだ。たぶん、まだ寝ぼけている。ラジオの朗読...