遊泳する言葉

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魚になる季節

ふるさとの川で、少年の日を彩ってくれた魚たちの名前を、ぼくはときどき反芻してみる。それは古い日記のページをめくるようなものかもしれない。いまでは旧友たちの名前と同じくらい、懐かしくて楽しいものになっている。イダという魚の呼び名は地方のものだろう。ウグイという一般的な呼称は、ぼくの記憶のページにはなかった。エノハはヤマメのこと。シバコはヤマメの幼魚。カマスカは魚類図鑑ではカマツカだろうか。ドンカチは...

呼吸する言葉

ブログを始めたばかりの頃の日記に、次のようなことが書いてあった。*感動する詩は、言葉が呼吸してますね。独特な呼気と情感のリズムがあって、そのような詩は、詩を書く人と読む人との呼吸がうまく合ったとき、同じひとつの感動を共有できるのでしょうね。だから下手に推敲すると、はじめに掬いだされた言葉と情感のリズムを、壊してしまう怖さがあります。推敲はあくまでも言葉の部分であって、呼気や情感のリズムをいじっては...

光ることば

東京の夜空に光る文字が流れていた。それをはじめて見たのはいつだっただろうか。まだ都会に慣れていなかったぼくには、言葉が空から降ってくるような感動があった。その電光掲示板は何かのニュースを伝えていたのだろうが、ぼくはただ、静かに降ってくる不思議な文字に見とれていた。そして、電光掲示板の文字のように、あれから長い歳月が流れた。ぼくはいま、液晶画面の光る文字を追いつづけている。日々、小さな感動を味わいな...

ふつうの言葉と詩の言葉

『谷川俊太郎質問箱』という本を読むともなく読む。糸井重里のウェブサイト『ほぼ日刊イトイ新聞』に連載されたもので、3年前に本として発刊されているから、すでに読まれたかたも多いとおもう。メールでの質問に、谷川俊太郎が回答したものだ。その中に次のような質問と回答があった。―ふつうの言葉と、詩の言葉の違いは何ですか?―(みく 34歳)それに対する詩人の答え、―ふつうの言葉だと、たとえば「あなたを愛しています...