遊泳する言葉

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えんぴつの朝

きょうも朝があった、と思う。変な感覚だが、朝というものを確かめてしまう。そういう気付きを、朝顔の花に気付かされる。のんべんだらりではなく、毎朝あたらしい花が咲く。毎朝、あたらしい朝がある。これは素晴らしいことなのかもしれない。猛暑、酷暑、炎暑。昼も夜も境いめもなく暑い。一日のうちに、はっきりとした区切りがない。だらだらと暑い一日があり、暑い日々が続いている。朝らしい朝がなく、昼間らしい昼間がなく、...

りんごがりんごであるために

赤い一個のりんごがある。白い表紙。その表紙をひらくと、黒いトビラがある。白抜きの文字で、タイトルは『叫び』。詩の言葉たちが待っている。   私の声に耳をそばだててこれは言葉だろうか、叫びだろうか。   でなきゃ その大きなナイフで   私を一突きに 殺してしまいなさいやはり、これは叫びだった。しかも悲痛な叫びだった。さらに、トビラの裏に大きくプリントされた血文字、「死ぬまえに生きろ」と。熱い叫び、...

夢みるひと

毎日が夢を見ているようや、と母が言ったと、妹のメールが伝えてきた。妹は一日おきに母に会いに行く。母に顔を忘れられないためだという。いまの母には、今日という日、今という時しかないのだろうか。ひとつひとつの出来事が、ぶつぶつに途切れて現われる。それはまるで夢のようなのだろう。この春、病院から介護施設に移った母は、いまも病院にいると思い込んでいる。早く歩けるようになって退院したいと言うらしい。だが母の様...

あさがおの「あ」

あさがおの花が咲いたどれも「あ」と大きな口をあいてるようだそれぞれの「あ」からそれぞれの「あ」がきこえてくるあさだよっの「あ」あっついようの「あ」あいしてるよの「あ」あいせないのの「あ」おっぱいの「あ」あっまちがえたの「あ」あかんたれの「あ」あほんだらの「あ」あ~あの「あ」ゆうがたみじかく饒舌な一日をあさがおは「ん」でとじるあしたの「あ」のために...