遊泳する言葉

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祈り

祈ることが多くなった。祈りという行為がどこかに誰かに、届くものか届かないものかはわからない。しょせんは自分の心から発して、自分の心に返ってくるものなのかもしれない。それでも祈ってしまう。力の及ばないところを、祈りに託してしまう。そして祈ることにも疲れて、祈る言葉も失っていく。人間とは弱いものだ。夢であってほしいと願うひとが、夢から覚める苦しみをおもう。何もかもが奪われた土地で、流されずに残った梅の...

ふるさと

国破れて山河あり…いま野山は、花で満ちようとしている。知ってる名前の花、知らない名前の花、知っていたけれど忘れてしまった名前の花など、色とりどり、さまざまな花が野山をいろどる。ことしも故郷(ふるさと)は、変わらずに美しくあるだろうか。うさぎ追いし かの山こぶな釣りし かの川♪被災地の卒業生たちが歌う『故郷(ふるさと)』。そこの体育館は被災者たちでいっぱいで、涙、涙、涙だった。山は青きふるさと水は清き...

涙の海

なみだはにんげんのつくることのできる一ばん小さな海です青森県で生まれた詩人の寺山修司が書いた一ばん短い抒情詩・・・瓦礫の道に立ちつくすひとびとの涙が止まらない海なんかもういらないといま日本中が涙の海におぼれていますはるかな昔一滴の海の涙からうまれた命うれしくても悲しくてもあふれる涙だからいつかまたきっと海と和解できる日は来るでしょう...

吉里吉里国はいま

ああもう家も道路も無くなった北も南もわからない吉里吉里国はどこですか吉里吉里人はどこに居ますかまんなご(眼)はァ すんず(静)がなちりちりづん(吉里吉里人)元気な人たちがいっぱいおもしろい話を語ってくれた井上先生どこへ行ってしまったのですかさみしいです悲しいですいまは吉里吉里国が遠すぎます国境を越えて会いにゆきますみんな生きててくださいがんばって生きのびてください***井上ひさしの長編小説『吉里吉里...

この世は美しい

それはまだ明けきらない早朝のことでした16年も前のことですとてつもない大きな怪物が私の家を壊しにきたと思いました窓や戸や何かがガタガタと鳴り床が跳び上がるようでした大きな音を立ててタンスや本棚が倒れ食器がつぎつぎに落下して割れていますこれはもうこの世のことではないあるいは悪夢だまさしく短くて長い悪夢でしたしずかに夜が明けましたチチッと小鳥の声がきこえました落下物の山の中から飼っていたインコが這い出...

THUNAMI

夢のなかへ津波が押し寄せてくる目覚ましラジオのアナウンスがくりかえしおそってくる空が赤く染まっているあれは津波だ大きな波が空から活火山をのみ込もうとしている小さな山もつぎつぎにたいらな海になっていくああ遂に庭の梅の木まで沈んでしまう目覚めても津波はおそってくる三陸沖で地震が発生しました沿岸部は津波にご注意ください*****THUNAMIのような朝でした^^。写真の風景は、津波など襲ってきそうもない九州の山間部...

卒業する君へ

おめでとうの言葉に添えて今朝の、この太陽をきみに贈ろうあらゆる生き物が海から生まれたように太陽もまた海から生まれたようなこの新鮮な輝きのなかできみの新しい一日を始めてほしい進路が決まっているきみもまだ決まらないきみもいまは朝の眩さのなかでとまどっているかもしれないがやがてこの明るさにみちびかれてきみの道は見えてくるだろういま歓喜するきみも苦悩するきみもとにかくこのときを始めようみんなそこから希望と...

人形のとき

父の十三回忌の法要をした。九州の田舎の、穴ぼこのような小さな街を、春の節句を祝う静かな華やぎの風が漂っていた。さまざまな雛人形が、古い時代の装いや表情をして、家々の玄関や店先に飾られている。人形のあるところには、いつもとはちがう少しだけ華やいだ風景があった。人の影はめっきり少なくなったのに、着飾った人形ばかりが勢ぞろいして、かつての街の賑わいを無言で語りかけてくるのだった。父は翌日出かける予定があ...