遊泳する言葉

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幸せの時間

あさ窓をあけると庭が砂浜になっていた知らない赤ん坊の小さな手からさらさらと砂がこぼれているそこには昨日までたしかアサガオが咲いていたそうかもう秋だったんだおもちゃのスコップとバケツをもって庭にでるどこから来てどこへ行くのか赤ん坊は何もしらないはじめての砂浜私もまたてのひらから砂をこぼしながら幸せの時間を計ってみる...

記憶の花びら

風のいたずらか、ふと小さな花びらが舞い降りてくることがある。桜の季節にありがちな、それはたぶん春の記憶といえるだろう。そして今は秋なのだった。妹から手紙が来た。母の近況が書いてある。新しい介護施設に移って2週間がたった。環境が変わったけれど、母は変わらずにいるという。母の中で、昨日と今日は繋がっていないし、朝と夜も繋がっていない。だから昨日まで居たところと今日のいま居るところとは、異なってもいない...

サンタマリア号

この夏、大阪港を周航するサンタマリア号に乗った。海風に乗って、コロンブスという言葉が、とても遠いところからやってきた。古い友人に会ったみたいだった。古い時代に戻ったみたいだった。サンタマリア号、新大陸発見、コロンブスの卵などの言葉が飛び出してきて、茶色に変色した古い本のページを開くようだった。500年という歳月を遡る。地球は球体である、と信じ始められた時代だ。西に進めば東端にたどりつく、とコロンブ...

海のみず、山のみず

台風一過。誰かが掃いたような雲と、澄みきった青い空。大量の水で、空も洗われたみたいだ。だが台風12号の記録的な豪雨は、日本列島を水浸しにした。とくに紀伊半島の被害は大きい。急峻な山を崩し、川を氾濫させ、家や人を押し流した。死んだ人は30人以上、行方がわからない人は50人を超える。さらに、道路が崩れて孤立してしまった人は、5千人にもなるという。その紀伊半島の中心には、十津川村という日本一大きな村があ...