遊泳する言葉

Archive Page

ゆく年くる年

毎とし年末になると、大阪の通天閣では干支(えと)の引き継ぎ式という、おもしろい行事が行われている。実際に見たことはないが、その模様は通天閣のオフィシャルサイトにアップされている。ウサギを抱きかかえた、天王寺動物園の長瀬園長がまず挨拶をする。「東日本大震災、原発事故、欧州危機。今年は何をやっても兎(う)まくいかず兎兵法。 なでしこジャパンが世界一とウサギばらし(憂さ晴らし)してくれましたが、全体的に...

絆(きずな)

このところ、絆(きずな)という言葉を見かけたり、耳にすることが多くなった。どこかの漢字の協会で募集した、2011年の漢字に選ばれたトップも「絆」だった。2位が「災」で3位が「震」だというから、この現象はやはり東日本大震災などの大きな災害の爪痕が、ひとびとの心に残していったものにちがいない。久しく遠ざかっていた言葉に、今あらためて出会ったような気がする。絆という言葉の語源は、馬などの動物をつないでお...

ふたつ

ふたつの果実なんで生まれてきたんだろうなんで生きているんだろうくりかえし熟して大きな赤ん坊に育ってしまった耳の魔女がささやく真実はひとつおっぱいはふたつ膨らんでいく幻想と乳首ほどのちっちゃな真実そのふたつをふたつの手が求めつづける左手によろこびと右手にかなしみ林檎よりも重く生まれて地球よりも軽く生きている真実はひとつときにはふたつ     (『ファンタジアシリーズ』)...

花の名前

あちこちで、山茶花の花が咲いている。白やピンクの花が咲いたり散ったりしている。花の少ない時期だから、花のあるそこだけが賑やかに目立っている。つい最近まで、山茶花と椿の花の違いもわからなかった。いまは、花の咲く時期や散り方で、その違いを見分けている。だが、それも正しいかどうかはわからない。季華(きはな)という名の女の子がいる。その命名にはぼくも関わりがある。四季折々に咲いている花のようにあってほしい...

小さな窓から

小さな窓から小さな部屋の小さな空へ移りかわる日々晴れた日は手さぐりの虚ろ雨の日はとおい耳風の日は過ぎていく水暗い夜はあてどなくただ凍えている小さな窓から12月の雲さまよえる魂をはこぶ春の津波はなお森の深くまで押し寄せてきた吹きだまりには落葉のやまいまは雲の道もみえない小さな窓から小さな光近いのか遠いのかかすかに夢の声を明るくする星の宇宙からノックして光るものを言葉にかえるひと小さな窓から見つめつづ...