遊泳する言葉

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ひらがなとカタカナ

「私たちは中国から学んだ漢字の他に、そこから工夫した独自の文字ひらがな、カタカナをもっています。私の詩が田原さんによって中国語に訳されたのを見て、私は不思議に思います……私の詩が漢字になってしまった。私のひらがなやカタカナたちは一体どこへ行ってしまったんだろう?」。上の引用文の中で「私」というのは、詩人の谷川俊太郎氏である。田原(Tian Yuan)さんとは、中国出身の現代詩人。日本でも活躍し、中国語と日本...

読み違いする脳

米長邦雄永世棋聖が、将棋のコンピューターソフトと対局して負けたらしい。ソフトの名前は「ボンクラーズ」という。元名人に勝ったのだから、とてもボンクラどころではない。1秒間に1800万手を読むというから、すごい。読みの速さと正確さでは、とても人間の及ぶところではない。終盤の玉詰めの段階では完璧だという。だが、人間だって負けてはいない。駒を組み立てていく序盤や中盤での構想力や、勘や経験が生かせる感覚的な...

天然のスイーツ

山裾の一角の、岩肌が露わになったなんでもない場所が、とつぜん夢の中で浮かび上がってくることがある。ふだんは思い出すこともないが、子どもの頃のある時期には、とてもだいじな場所だったようなところ。そんな場所だ。そこはいつも、山の清水が滴り落ちている。寒い冬の朝、雫が凍って氷柱(つらら)になっている。手を伸ばして氷柱を折る。細く尖った先の方から口に入れてがりりと噛み砕く。氷が溶けて、草のような土のような...

おみくじは末吉

あけましておめでとうございます。カレンダーが新しくなった。気持のほうも新しくしようと頑張ってみるが、何が新しくなったのか、なかなか実感できるものがない。年の始めだけは、飾り付けた鏡餅に柏手を打ったりして、すこしだけ神さまに近づいてみる。神さまはどこに居るのか。近くの山道を下って田んぼの畦道を進むと、その先の小さな森に神さまは居るらしい。その辺りを昔は、村人が上神谷(にわだに)と呼んだところ。きっとた...