遊泳する言葉

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榎の葉っぱ

いつからだろう背中に川が流れている岸辺には大きな榎の木があるその川にはエノハという美しい魚が棲んでいたむかし榎の葉っぱが魚に変身するのをおじいさんは見たという退屈な日々のあけくれ水を裂いて銀色の魚体がさっとよぎる歓喜にふるえたのは透明なナイロンテグスだったかそれとも少年の指だったか掌にのこる小判のような葉っぱをもとめて瀬から瀬へエノハの水にいくども溺れた私には鰓がないのだったその川のそばで母はひた...

小さな花のくに

いつもの、173センチの視界ではなく、たまには33センチほどの、膝下の視界に下りてみる。いまはそこも、花ざかりの国だった。名も知らぬ小さな花、花、花。均整のとれた6枚の花びら。拡大することができれば、ユリの花にも負けないかもしれない。などと、ぼんやり見つめていたら、「何してはりますの?」と、通りがかりの人。「いえ、ただ花を見てるんです」と応えたが、なんだか恥ずかしい。長い時間そこでねばっていたので...

高野山をあるく

久しぶりに高野山を訪ねた。わが家からは、電車とケーブルを乗り継いで2時間ほどの行程だ。きらきらと眩い新緑のタイムトンネルを潜って、雲に近い山上の街に着く。寺院と商店と大勢の人と、そこは過去と現代が混じり合って賑わっている。古いものも静まってはいず、大きく煌びやかに叫び声をあげている。日常を超えて、山の声を聞くことができる場所だ。この山を開いた人は、1200年の時をこえて今もなお生きつづけているとい...