遊泳する言葉

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石の顔

母の四十九日の法要のため、1週間ほど九州に帰ってきた。この秋は始めと終わりに2度、瀬戸内海をフェリーで行き来したことになる。その間にぼくは大阪で生活し、ふたたび九州に戻ってきたわけだけど、いつしか台風の季節も去って、木々の葉っぱも散り急いでいるようで、そこはもうまっ白な霜の降りる季節に変わっていた。49日という時をかけて、死者はあの世に向かうという。それは仏教の宗教的幻想であるが、49日という現実...

坂のなまえ

小春日和の一日、落葉のように、ひらひらとさ迷ってみたい。それも、田舎道や林の中の道はさみしい。都会のにぎやかな道がいい。さまざまな形のビルがあり、マンションがある。まっすぐな広い道路があり、たえまなく人が交錯し、あわただしく信号が変わり車が疾駆する。いまの季節は、寒そうだったり暑そうだったりしているひとびとの、さまざまな服装がおもしろい。新しい車や古い車の、型やスタイルを目で追いかけるのも楽しい。...

朝の再会

4年ぶりに地球と再会、という新聞の大見出しがあった。宇宙人のことかと思ったら、宇宙士のことだった。日本の宇宙飛行士の若田さんが、4年ぶりに宇宙ステーションの窓から地球を見て、その半球に広がる姿に感動したという記事だった。ぼくのような地上にべったりの人間には体験できない、そういう再会の仕方もあることを知った。この地上では、朝の路面いっぱいに落葉が散っている。さまざまな形や色をした葉っぱを踏みながら、...

かっぱの話

新しい詩がなかなか書けないので、古い詩を読み返している。その中に、河童のことを書いた詩が2編ほどあり、いずれも河童の影と父の影がしっかり重なっているのが不思議だった。いつのまにか父は、ぼくにとって河童のような存在になってしまっているのかもしれなかった。ぼくの中にいっぴきの河童が棲みついていて、語り継がれていく古い家族の肖像は、時とともに古里の民話に近づいていくようなのだ。*  秋の河童いつか山の道...