遊泳する言葉

言葉が追いつけないものがある。言葉に追いつけないものがある。だから言葉を追いかける……

花の声はどこかに届くのか 

朝顔の花は、「あ」と発声しているような口の形で、咲いている。朝だから、朝だようと言ってるのだろうか。それとも、(もう)明るいとか(夜が)明けたとか、暑いようとか秋だようとか、愛してるとか飽きちゃったとか、それともアーアと、大きなあくびでもしているのだろうか。大阪の朝顔なら、アカンとかアホウとかも言ってるかもしれない。わが家の朝顔も、それなりの人格を感じてしまうほどに長い付き合いとなった。毎年おなじ...
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青虫はどこから来てどこへ 

夢をみた。ぼくの中指ほどに大きくなった青虫が、葉っぱを齧るように空の雲を食べている。夏の白い雲は柔らかくて冷たい。なぜかその味わいを、ぼくの舌が味わっている。そんな夢の奇妙さを奇妙と思うひまもなく、夢から覚めた。朝はまず朝顔の花がいくつ咲いたかを見る。それが寝ぼけた頭には、朝の小さな刺激だった。しかし、この夏はもうひとつの刺激が加わった。朝顔の葉っぱに棲みついた青虫の居場所を探すことだ。青虫は夜の...
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近しき人たちは遠くにいる 

秋にはまた九州に帰らなくてはならないので、母の初盆には帰らなかった。墓参りにも行かないお盆は、とても静かだ。急にまわりに人が居なくなって、地球の外れに取り残されたようだ。静かになって振り返ってみると、近しい人たちの多くがすでに彼岸の遠くへ行ってしまっている。父や母、祖父や祖母はもちろん、叔父や叔母たちもみんな、そしてぼくより若いいとこや親友も幾人か遠くへ行ってしまった。親友といえるものが少ないぼく...
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朝顔のような夏の日がある 

朝顔の花がひらいて、夏の朝がはじまる。いつもと同じ花があり、いつもと同じ夏がある。懐かしい花の色と形、ずっと前から見慣れた花の顔をしている。蒔いた種がいつもと同じだから、同じ花が咲くのだろう。けさの花はきのうの花でもあり、去年の花でもあり、ずっと前の、もう忘れてしまった時の花でもあるのだろう。いつもと同じ花だから、いつもと同じ夏の景色になってしまうのだろう。そうやって朝顔は、夏の記憶をつないでいる...
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