遊泳する言葉

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あっと言うまの花じかん

あっと言うまの花の季節でした。いつもの「あっ」とひらいた口の形で、さいごに朝顔姫はアデューと言った。なんて書くのは美化しすぎ。たぶん、アッカンベーをしたのだろう。愛してるとは言わなかったとおもう。毎朝せっせとおいしい水をやったのに。すっかりみすぼらしくなった朝顔の蔓を片づけた。複雑に絡み合った蔓をほどいていると、朝顔の執念のようなものを感じた。ひと夏をかけてはびこった、凄まじいともいえる花の生命の...

透きとおってゆく秋だから

山があかく燃えて灰とけむりが漂うさきへ追われた鳥のようにただ風の軌跡を追いつづけていたすきまだらけの秋だから言葉は透きとおってゆくばかりです書いてはすて書いてはすてるかたちにならないものをかたちにならないままで書き損じの紙くずのなかでじっと息をひそめてしまうのですふるい言葉は忘れましたが吃音に近いふるさとの訛りでシャーペンの細い芯を折りながら花びらいちまいの想いを花いちもんめと伝えてみるようやく熟...

落葉の舟にのって旅をすれば

短編小説を読む。短い小説は、小さな旅をしたみたいに、こころよい疲れがのこる。散歩で拾ってきた落葉を、ページの間にはさみ、椅子にすわったまま目をつむる。眠るつもりはないが、眠ってしまうかもしれない。いつしか体が浮遊しはじめている。小さな舟にのって水の上を漂っているようだ。落葉を拾おうとしている。その右手に、なぜか力が入っている。さらにその先へと、ぼくは必死に手を伸ばそうとしている。なかなか思うように...

空気はネバネバしているか

夏から秋に、すこしずつ季節が変わりつつあるのだろうか。昼間の騒がしかったセミの声がしなくなり、夜になると虫の声がさかんになった。陽射しも透きとおって澄んできたように感じる。四季にはそれぞれに色があるらしい。春は青、夏は朱、秋は白、冬は黒だという。秋は白い季節なのだ。俳句などでも白い秋とか白い風といった表現があるようだ。「石山の石より白し秋の風」(松尾芭蕉)目には見えないが、白い風が吹いている。虫た...