遊泳する言葉

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その流れる一瞬のときを

これまではこれまで、これからはこれから、ふと立ちどまり、ふと思う、年の瀬――。*なにごともない長閑な午後つと空をよぎる鳥がその日の栞になったとりとめもない眠りの果て闇の中にひとつ星がその夜の栞になった行くでもなく戻るでもないふたしかな彷徨い花がその道の栞になったお~い雲よ人よどこから来てどこへ行くのかその流れる一瞬のときがきょうの記憶の新しいページをひらくだろう――では、よい年をお迎えください。...

あなたのくにを探している

最後の1枚になったカレンダーをながめていたら、きょうは冬至だった。暦というものが旧暦だった頃は、冬至は大切な日だったらしい。南に落ちてしまいそうな太陽の光をとらえて、新しい暦が作られたのだった。古代の中国では、冬至は始まりの日であり元旦と呼ばれていたという。終わりの日は始まりの日でもあったのだ。いまは朝がなかなか明けない。太陽の光がある昼間はみじかくて、すぐに夜がやってくる。一日が短いように感じる...

耳をすませば水の物語があった

アドレス帳を整理する。いくつかのアドレスをデリートする。消しがたいものもデリートしなければならない。疎遠になったものも消すことになる。いくつかは新しく書き込む。新しいものはよそよそしい。書き加えたものよりも消したもののほうが多くなる。いつのまにか隙間だらけのアドレス帳になった。その後お変わりありませんか!などと隙間に呼びかけても返事はない。隙間のひとつひとつは、来し方の自分自身の隙間でもあろうか。...

はじまりは一本の木だった

すっかり裸木になったあの木のてっぺんにいるのは誰だろうぼくの知らないぼくかもしれない忘れていたのかもしれないすっかり忘れていたぼくなのかもしれないあそこにはたぶんきのうの風が吹いているぼくは手を振っただがそいつはじっと空をみつめている空には何もない木は何をつかもうとして枝を伸ばすのかはじまりは小さな一本の木だった小さな手で植えられたシイの木だったそしてぼくは木だった...