遊泳する言葉

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ぼくのオカメインコが卒業した

翼をください卒業式に歌ったねせんせいこないだ雪がふった日にぼくのオカメインコが死んだんだぼくの手のひらで羽をいっぱいにひろげてそれっきり飛びたかったのかなもういちどそれともポーズだったのかなグッバイってキューチャン キューキューシャキューチャン キューキューシャパタパタあの声ももう聞けない大きなケヤキの樹の下に小さなパタパタをぜんぶ埋めたいつか土になって水になるんだって木になって枝になって葉っぱに...

水の季節がやってくるとき

花が咲いて春がやってくる。今はそう思っている。まるで花のことなど無関心だった子どもの頃は、春は水の中から生まれてくるのだった。すこしだけ暖かい日に、田んぼの畦道を歩いていると、水たまりのように流れの止まった水路から、懐かしい匂いが立ち上ってくるのだった。それは冬のあいだ忘れていた土の匂いのようであり、草の匂いのようであり、風の匂いのようでもあった。匂いは動いていた。軟らかい湯気のように空気を動かし...

ふたたび冬の森で生きている

森の声なき声が、冬の森をさまよっている。風のとおる道は、枯れた落葉の匂いで満たされ、空があらわになった裸木の森は、隙間だらけでかえって明るい。細い枝々の先が、何かをつかもうとして競っているようにみえる。そこには吹き抜ける風と白い雲しかないけれど、ふわふわの雲にもうすこしで手が届きそうで、枝々の細い指先はもう、季節の温もりをさわっているのかもしれない。*だれか森の奥で 山桃の実を食べている 指のさきか...

いつか空の高みを飛べるかな

最後に残った1枚のガムきみとぼくと分けあって噛んで銀紙できみは小さな折り鶴を折ったたった1羽の小さな希いきみの細い指先のたどたどしくて翼が欲しかったのだろうか空を飛びたかったのだろうかこの手から今なら飛ばせるかもしれないいつかのあの日の空へ...