遊泳する言葉

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サインは、さよならとまたね

前田くんはピッチャーでぼくはキャッチャーサインはストレートとカーブしかなかったけれどあの小学校も中学校もいまはもうない前田くんはいつも甘いパンの匂いがした彼の家がパン屋だったからだがベーカリーマエダもいまはもうない最後のサインはさよならだったさよならだけでは足りなくてもういちどさよならと言ったそれでも足りなくてまたねと言ったあれから春はいくども来たけれどまたねは来なかったいつもの朝があるさよならと...

そらの窓から

うぐいすが空の窓をひらいていく小さな口でホーっと息を吸ってホケキョっと息を吐いて春はため息ばかり風を明るくする...

漂って夢の淵へ

短編小説を読む短いストーリーは小さなトリップであるこころよい疲れがのこる散歩で拾ってきた落葉をページにはさみ椅子にすわったまま目をつむる眠るつもりはないが眠ってしまうかもしれないだんだん体が軽くなっていく小さな舟にのっている水の上を漂っている落葉を拾おうとしてその右手に力が入っているさらにその先へと手を伸ばそうとしているなかなか落葉に手がとどかないいつのまにか手の先に幼い子どもがいる読みかけの本の...

鯨はみどり色の夢をみていた

それは鯨ではないおたまじゃくしだスケッチをするぼくの背後でだれかの声がした骨になって眠りつづける博物館の鯨宙に繋ぎとめられたまま白い夢はなかなか目覚めることができない潮によごれた丸い窓をぼくはみず色で塗りつぶした骨の鯨はひとつの窓から空をみもうひとつの窓から海をみていたぼくは夢の窓から大きな鯨を探しつづけた小さな鯨はどこまでも追いつけないみどり色のながいながい夢だった風に泳ぐ草がみえる白いキャンバ...