遊泳する言葉

言葉が追いつけないものがある。言葉に追いつけないものがある。だから言葉を追いかける……

シャボン玉 

わたしの息に無数の虹がかかるシャボン玉の中にうまれた小さな空と海浮遊し回転し風の形になり雲の色になりつかのま空を飛んでるわたし海に溺れてしまうわたしつぎつぎと霧となって空はこわれ飛沫となって海もこわれてきらりと一滴のしずくそうしてまたわたしも生まれかわる...
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麦わらのストロー 

その季節はそこにしかないぼくはまっすぐなストローになる麦わらで篭を編んで野イチゴをさがしにいく紫陽花いろの雨のジュースときにはシャボン玉のたくらみなかなか飲み干すことができない形のないものはまっすぐな味で満たされているストローの風になってストローの笛になってかすかに見えるものを追う小さな光の先どこまでも入口はつづいていたすぼめた唇から麦の記憶が滴っているコップの中に小さな海があるきょうは終日この海...
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竹トンボ 

すいーっと水平に赤いトンボがぼくの記憶の空をよぎったウノハナの花の上をシロツメクサの草の上を丸い渦をまいて竹のトンボがその日ぼくの掌をはなれもうひとつの風の意志になって舞い上がっていった赤いトンボを追うそこは大きな空の始まりだった...
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紙ヒコーキ 

空に放つ思いをこめた言葉のようにいちまいの紙は風に浮くことしかできないけれど鋭角に折られた紙はひとつの意志となって飛ぶことができる山をこえ海をわたる鳥のようにはなれないけれど紙の翼はひととき美しい空の希いとなる...
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糸でんわ 

この細い糸のさきにあなたの耳は触れているでしょうかいまはまだ言葉にならない言葉がかすかに震えながらさまよっています小さな花が搖れていますテントウ虫が翅を開こうとしています風にゆれる葉っぱの先から飛び立とうとする虫のかすかな息遣いが伝わってきますこの始まりの心音があなたの胸に届くでしょうかたどたどと文字を打つように紙のドアをノックしている背中に星をのせたテントウ虫はいつか宇宙の光になれるかもしれませ...
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