遊泳する言葉

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白い線路が続いている

白いチョークで2本の平行線を引きながら少年の線路は延びていく始発駅は細い路地のどんづまりそこには大きな猫がいた線路をたどると記憶の始まりに行きつく駅と駅を正確につないでいくように単調な遊びをくりかえす少年は電車になりたかった2本の線を引きつづける手にもったチョークが鉛筆にかわり鉛筆がマジックペンにかわりマジックペンがマウスにかわってもどこまでも線路は延びていく夢の中から夢のそとへ景色の中から景色の...

海を釣ったという老人の話

あんた、見かけない人じゃね海の人かい、陸の人かいわしはこのとおりシケた釣竿が1本きりじゃ釣れても釣れんでもええ竿はわしの腕みてえなもんかなジャコの機嫌もとらにゃならんし海の柔らかい手にも触っていたいとりたてち楽しうもねえじゃけんど退屈ゆうわけでもねえここは海と陸との境界わしはもうどっちにも行けんきのうずっと海でいのちき(暮し)してきたけ体はおおかた魚になっちょるもう潮っからい風でないと息もでけん何...

今年のおみくじは小吉だった

暖かい正月、暖かすぎる正月となった。昨年の正月と同じように、落葉を踏みながら山道を下り、田んぼの細い畦道を通って、上神谷(にわだに)と呼ばれる古い集落の神社にお参りする。この神社にたどり着くまでの道のりが、ほんの30分ほどの歩行なのに、なんとなく古い時間に戻っていくようで気に入っている。鎌倉時代の創建と伝えられる国宝の拝殿を潜ってお参りする。とくに何かを祈願するわけでもないが、すこし畏まって柏手を...

あたらしい年がはじまった

あけましておめでとうございます。陽がのぼり、陽がしずみ、秋がゆき、春がくる、やはり地球は回っているんですね。でも年ごとに、その回転は速くなっているような気がしてなりません。一日が、一週間が、そして一年が、なにするでもなく、あっというまに過ぎてゆきます。時の車輪にはブレーキもないのでしょうか。これからはむやみに大きな喜びを追うのではなく、小さな喜びをちまちまと、ゆっくりのんびり拾いあつめていこうと思...