遊泳する言葉

Archive Page

しあわせの時間

  幸せの時間  あさ窓をあけると庭が砂浜になっていた知らない赤ん坊の小さな手からさらさらと砂がこぼれているそこには昨日までたしか沈丁花が咲いていたそうかもう夏だったんだおもちゃのスコップとバケツをもって庭にでるはじめての砂浜どこから来てどこへ行くのか赤ん坊は何もしらない私もまた手のひらから砂をこぼしながら幸せの時間を測ってみる*  耳の海夏は山がすこし高くなる祖父が麦藁帽子をとって頭をかいたわし...

花の声が聞きたかった

  耳きょうタンポポとハルジオンを食べたすこしだけ耳が伸びて花の声を聞いたあしたはスミレとバラの花を食べる耳がまたすこし伸びたら花よりももっと遠い声が聞けるかもしれない*  白い花小学校の卒業式の日梶原先生が歌うのをはじめて聞いた白い花が咲いてた……と歌ったふだん怒ると顔が真っ赤になったけど歌ってる顔も真っ赤だった先生おげんきですか先生は黒板いっぱいに心に太陽を持て…とチョークで書いたクラスのみんなに...

紙のイメージによる詩2編

  紙のおじいちゃんおまえに綺麗なきものを着せたったら紙人形のように可愛いやろなあそんなこと言うてはったおじいちゃんいつのまにか紙のおじいちゃんになってしまはったあれは風のつよい日やった中学生やった私は下校の途中でなんや空の方からおじいちゃんの声がしてんひらひらひらひら凧のようなもんが街路樹に引っかかっとってんそんなとこでなにしてはんのおじいちゃんすっかり紙になってしもうてたこんなに平べたになりは...

なみだは小さな海だった

  コップ夜中にひとりコップの水を飲むとき背中でくらい海がかたむくすぎた夏は濾過されて透きとおっている貝殻をひろい小魚をすくうたくさんの手がおよぐあれから太陽の影を追ったあの海をまだ飲み干していない*  水の時間洗面器の水に指を浸すわたし達の海はこんなに小さい手と手が触れ合えるささやかな暮らしでよかったねときどきは窓のそとで水音がするあれはイルカあれはシャチわたし達の赤ちゃんもいま広い海を泳いでい...