遊泳する言葉

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記憶する家

  階段階段の上に子供がいるそれはぼくだぼくは階段をのぼるすると子供はもういない階段の下にも子供がいるそれもぼくだぼくは階段をおりるするとふたたび子供はいないかつて誰かを階段の途中で待っていたぼくと誰かそのときはふたりとも子供だったその日父が生まれ母が生まれた*  でんわばんごう住むところをいくども変わったので電話番号もいくども変わった電話番号をたずねられると一瞬のとまどいがある3でもないし9でも...

星の詩を書くのは難しい

  流星群草の舟にのって夜の川をどこまでも下っていきたい銀河のかなた降りしきる流星群を浴びたら星くずの鉛筆で長い長い手紙を書くそれからポストをさがして千年の旅をするだろう*  星の時間星が降るそんな時代がありました光の川を泳ぎ光の国を彷徨った光の国のひとを訪ねたが光の国は遠かった光りの約束ばかりで幾億光年というときは流れ去っていくのでしたですからまだそのひとには会えません*  ガラスの星ガラス玉のよ...

あの夏を思い出せない

  一滴の夏水が魚になり魚が水になる水の記憶がしたたる夏青い手のひらを泳ぎわたるいっぴきの魚きらきらと水を染めて一滴の雫となったあの夏*  少年の夏はどこへ大きな捕虫網でいっぴきの夏を追いかけた少年の夢はなかなか覚めない布きれで細長い袋をつくり針金の輪をとおして長い竹竿の先に括りつけていく父の作業を見ていたそれでセミをとるのだと言う父について林に入るアブラゼミクマゼミミンミンゼミヒグラシまさにセミ...

ヨーヨーおじさんの夏

  おじさんの花火ヒューヒューヒューとおじさんは唇を鳴らしながら現れるドーンと叫んで両手を高くあげおもいっきり地面を蹴るとおじさんの体は夜空へ舞い上がってゆく闇に大きな花火がひらくぼくたちはおじさんの花火が楽しみだったおじさんは夜しか現れないビョーキだから痩せこけている仕事がないから髭も剃らない子どもも奥さんもいないようだそら豆のような唇をヒューヒューヒューと鳴らすのが癖だおじさんの花火はひと晩に...