遊泳する言葉

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めだかの学校

  作文教室あさおきて、かおをあらって、ごはんをたべて、それからがっこうへいきました……そこでもう、ただ鉛筆を舐めている。その先へは進めない。楽しかったことや、辛かったことも書いたらいい、と先生。やすみじかんに、こうていで、やきゅうをしました……それは楽しかったことだ。しかし文章にしてみると、すこしも楽しくなかった。一日のあったことを、ありのままに書いたらいい、と先生。ありのままに書くとは、どう書くこ...

あはれ魚になる季節

  夏の魚となって醒めきらないままのコップのなかに残された朝と水を分けあうゆっくり水際を泳いでゆこうとする小さな魚がみえる夏のはじまり草となりただ草となるそれだけの夏があることを魚は知らない水となりただ水となった魚は水上の雲を砕かんとして空へはじける一瞬の夏を残して*  秋の魚あはれ朱色の葉っぱを頭にのせてセコと呼ばれる河童が川から山へと帰っていく季節だったその道を山から川へと帰っていく人もいたそ...

風の国から

  風のことば西へとみじかい眠りを繋ぎながら渦潮の海をわたって風のくにへ古い記憶をなぞるように活火山はゆたかな放物線で懐かしい風の声を伝えてくる空は雲のためにあった夏の一日をかけて雲はひたすら膨らみつづけやがて空になったぼくは夏草の中へ草はそよいでぼくの中で風になった風には言葉がなかった洞窟のキリシタンのようにとつとつと言葉を風におくるゼウスのように風も姿がなかった風のくにでは生者よりも死者のほう...

家族のものがたり

  絵本雨が降ったあとに小さな水たまりができました大きなナマズが2ひきと小さなナマズが2ひきナマズの家族が泳いでいました泳いでも泳いでも同じ場所をぐるぐる回るばかりですこんなところは初めてだねここは一体どこかしら海のなかの海池のなかの池涙のなかの涙ああ目がまわるどうやら生きる場所をまちがったようだお父さんは慌てて絵本のページを閉じた*  かくれんぼむすめはきょう幼稚園で泣いたらしいでもどうして泣い...