遊泳する言葉

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白い線路はどこまでも

  砂の時間砂が落ちるのをじっと見つめている3分さらに3分わたしの水はようやく沸騰する風景の窓に砂がふっているかつてそこには駅があったはずだが春は鉄の匂いがする秋はコスモスが揺れている出発のときを待っているその測れない道のりを3分さらに3分砂の秒針を凝視する光の中で膨らんでいくおぼろげな輪郭をその沈黙と予感のことばを砂は告げようとしている*  博物館のクジラそれはクジラではない小さなナマズだ写生を...

季節の終わりと始まり

今朝もまだ、朝顔が咲いている。一時期は花柄もすっかり小さくなっていたが、今朝はまた盛夏の頃に負けないほどの、大輪できれいな花が咲いている。そういえば、まだ夏日の暑さもしつこく残っている。それでも夜になると、暗闇の中では虫の声もしずかな賑やかさで、夜空の月もひんやりと澄み渡ってみえる。どこからか漂ってくる、金木犀の甘い風も心地いい。ゆっくりと季節は移ろっているのだろう。移ろうなどと、なんとなく古めか...

みんな何処へ行ってしまったのか

  あしたの天気いつも見ている山が近くなったそんな日は雨が降ると祖父の天気予報湿った大気がレンズみたいになるらしい山が近いという大人の言葉が分からなかった山はいつも変わらなかったから秋の夕やけ鎌をとげまたもや祖父の声がするあしたは稲刈り顔を真っ赤にして鎌を研いでいた家を出た父は商人になった体も声もでかいが田植えも稲刈りもしたことがない雨ふる山も夕やけも祖父も父ももう居ない稲刈りする百姓も居なくなっ...

アイスランド、愛すランド

  白熊地下の機械室でとつぜん白熊が働くことになった会社では白熊も雇わなければならないそのような法改正があったらしい私の部下として配属された初対面のとき白熊は言ったイッショウケンメイ ガンバリマス白熊は青い空が怖いのでビルの上階で働くことができない一日じゅう地下室に居るとくに何か作業をするわけでもないときどき冷蔵庫を開けてアイスを食べている私が入っていくたびにイッショウケンメイ ガンバリマスと言っ...