遊泳する言葉

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インディアンの森

本棚に積んだままにしてあった古い本を整理しているうちに、懐かしい本が次々に出てくるので、ついページを繰りながら飛ばし読みをしたり、おもわず読みふけったりしてしまつた。かび臭い匂いと埃に包まれていると、それだけの年月を越えて、過ぎ去ったものの中へ帰ってゆくようだ。ヘミングウェイというアメリカの作家の名前が、いつのまにか古くて懐かしい名前になっている。文体も懐かしい。「彼(ニック)は父を二つのことでほ...

ナオキの相対性理論

ナオキという、小学4年生の孫がいる。学校でのあれこれを、よく母親に話すという。その話をまた母親から聞く。なかなか面白い。先日、相対性理論のことを口にしたら、クラスの誰も知らなかったと言う。え? 相対性理論? ぼくは耳を疑った。そんなことを知っている小学生がいたら、このじじが教えてもらいたいものだ。もしかして、きみは天才か秀才か。なんでそんな言葉を知っているのかと、驚いた。光速? 重力? そんな言葉...

ニセアカシアの花が咲くころ

アカシアの雨にうたれて~♪満開のニセアカシアの花の下に立つと、そんな古い歌が聞こえてきそうだ。高い樹の上で白い花をたわわにつけて、強くて甘い香りをふりまいてくる。歌にうたわれているアカシアも、このニセアカシアらしい。いつのまにどうして、ニセなどという名称が付けられてしまったのか。花にニセモノやホンモノがあるのだろうか。手持ちの樹木ポケット図鑑をみたら、ハリエンジュという別名も出ていた。小さなポケッ...

さわらび(早蕨)の道

宇治は茶の香り。爽やかな五月の風が吹きわたってくると、自然と香りのする風の方へ足が向いてしまう。「おつめは?」「宇治の上林でございます」そんな雅な風も耳をくすぐるが、まずは茶よりも腹を満たすことを考える。駅前のコンビニでおにぎりを買い、宇治川の岸辺にすわって食べた。宇治川は水量も多く、流れも速い。「恐ろしい水音を響かせて流れて行く」と、『源氏物語』宇治十帖の中でも書かれている。美しい浮舟の姫君は、...

書を捨てよ、野へ出よう

「ぼくは速さにあこがれる。ウサギは好きだがカメはきらいだ。」これは、寺山修司の『書を捨てよ、町へ出よう』の書き出しの文章だ。この本が出版されたのは、ちょうど50年前の1967年のこと。その頃から日本人はひたすら速さに憧れ、速さを追求してきたのではなかっただろうか。そして、やがてシフトダウン。スローライフの勧めや、ゆとり教育などが提唱されるようになる。週休2日の制度や祝日の増加などで、すこしはゆっくりのん...

ふらんすへ行きたしと思へども

新しい5月のカレンダー、爽やかな季節だ。とくに5月の朝は特別な朝、明るい光の中で目覚めもいい。5月の朝の東雲(しののめ)、と口ずさみながらベランダに立って、明るくなってゆく東の空をしばし眺めていた。    ふらんすへ行きたしと思へども     ふらんすはあまりに遠し     せめては新しき背広をきて     きままなる旅にいでてみん。     汽車が山道をゆくとき     みづいろの窓によりかかりて  ...